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Parchment Journey vol. 2
羊皮紙紀行 Vol.2 〜 シリア ダマスカス 羊皮紙の上のアラビア語

「彼女の頬はシリアの羊皮紙のよう。
彼女の唇はイエメンのなめし革。」
<The Ode of Tarafah (ベドウィンの恋の歌)>


このアラビアの詩は、イスラム教が伝わる前に砂漠の民ベドウィンの若者が詠ったものです。乙女の頬のような羊皮紙で知られたシリアの首都ダマスカスを旅しました。

このようにアラビアでは、昔から羊皮紙が使われており、イスラム教の聖典コーランも、始まりの7世紀から13世紀ごろまでは羊皮紙に書かれていました。

コーランの文章にも、誓いの対象としてのコーラン自体を次のように記載しています。

「解き拡げた羊皮紙に書き記された啓典にかけて。」

52章「山」第3節(岩波文庫 コーラン(下) 井筒俊彦訳)

今回の紀行は、2006年訪問のシリアの首都、ダマスカスです。


ウマイヤドモスク


ダマスカス

ダマスカスは、継続して人が居住している世界最古の都市であるといわれています。ギリシア・ローマの影響が色濃く残り、また661-750年のウマイヤ朝の首都として絶大な反映を誇りました。その美しさは、「千夜一夜物語」で次のような詩であらわされています。

「ダマスは木々と流れる水とに満ちた感嘆すべき都であり、
いかにも詩人によってかく歌われただけの都であると思いました。」

ダマスにて、我はひと日とひと夜を過ごせり。
ああ、ダマス!
そを創りし者は言挙げしたり、
彼とても、絶えてまたかかる作をは、なし得ざらんと!


千一夜物語
「大臣ヌーレディンとその兄大臣シャムセディンと
ハサン・バドレディンの物語」(岩波文庫)より






ダマスカス旧市街のアンティークショップ

ダマスカス旧市街のスーク(市場)には、活気が溢れています。スパイスに香料、オリーブ石鹸に生活雑貨・・・。
店ごとに漂う香りが異なります。
新約聖書の時代、使徒パウロはこの旧市街に今も残るメインストリートの一つ「真っ直ぐな道」というところでキリストに出会い、改心したと使徒行伝は記しています。
千夜一夜物語では、エジブトの大臣の息子がダマスカス旧市街に滞在し、そこで食べた絶品スイーツの話が載っています。



豊富なスパイス


オリーブ石鹸



ダマスカス・スイーツ

「僕らはスークでお菓子屋と知り合って、
ちょうどこれと同じお菓子を食べさせられたの。
だけどそれがね・・・・。
その匂いを嗅いだだけで、
うれしくなって胸が透くような気がするの!
その味といったら、
消化不良にかかっている人間の心だって
食欲を起こしちまうくらいおいしいですよ!」

千一夜物語
「大臣ヌーレディンとその兄大臣シャムセディンと
ハサン・バドレディンの物語」(岩波文庫)より

このような彩り溢れる旧市街の中に、あるアンティークショップでアラビア書道作品を取り扱う店があったため、立ち寄ってみました。

たくさんの素晴らしい作品があり、数百年前のマムルーク朝やサファヴィー朝のコーラン手書き写本断片や、本物のラピスラズリの顔料をふんだんに使った彩色作品など目移りするものがいっぱいです。羊皮紙の品物を見たくて英語で「パーチメント」と言っても店の人にはなかなか通じません。コーランの一節にあった、羊皮紙を意味する「ラック」という言葉を思い出して言ってみると、奥からクリアファイルを持ってきて、そこからクリーム色の動物の皮に書かれた作品を見せてくれました。

それは現代の書道作品で、羊の皮に書かれています。ただ、羊皮「紙」というにはあまりにも分厚く、羊皮「ボード」といったほうがよいほど硬いものでした。半透明のクリーム色で、通常の羊皮紙の作り方ではなく、ただ生皮を乾燥させただけといったようなものでした。(残念ながら写真は撮っていません。)

かつて「乙女の頬」とうたわれたシリアの羊皮紙も、現代ではこのような形でしか伝わってないのかなーと思い(羊はたくさんいるのに・・・)、結局買わずじまいでした。代わりに今から約450年前のサファヴィー朝で書かれたコーラン婦人章68-85節までの紙の写本を購入しました。



旧市街のアンティークショップ


サファヴィー朝のコーラン(婦人章


アラビア書道博物館

ダマスカスで羊皮紙を見るには、「マトハフ・アル・ハッタルアラビー」=「アラビア書道博物館」を訪れましょう。
「ミュージアム」というくらいだから相当期待して行ったのですが、オスマントルコ時代の銭湯(ハンマーム)を改造したこじんまりとした空間で、作品点数も多いとはいえません。
ただ、岩に初期アラビア語が刻んであるものや羊皮紙のコーラン、金彩や細密画が美しい紙のコーランなどどれも貴重なコレクションで、なかなか味のある空間です。


看板(傾いている)

羊皮紙のコーラン(暗かったので画像悪いです)

金が美しいコーラン(紙)

葦ペンと墨ツボ

羊皮紙のコーランはだいたいはがきくらいの大きさで、文字は写真のとおり大きく数行しかかかれていません。西洋の写本が羊皮紙を有効に使うために小さい文字で文字間隔を詰めて書かれているのに対し、コーランは装飾性の強いクーフィー書体で惜しげもなく大きな文字で書かれています。コーラン一冊に何枚使われたのでしょうか。
色は黄色っぽいクリーム色で、羊皮の毛側を完全に除去しない形で薄くしてあるものと思われます。

羊皮紙のコーランについては羊皮紙紀行Vol. 3の「バーレーン 〜コーランの館〜」に詳しく記載してあります。

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