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Parchment Journey vol. 3
羊皮紙紀行 Vol.3 〜 バーレーン コーランの館


羊皮紙紀行Vol.2のシリアに引き続き、イスラム教初期の羊皮紙コーランを訪ね、中東の小さい小さい島国バーレーン王国に足を伸ばしました。



バーレーンは、サウジアラビアとカタールにはさまれる形でペルシャ湾に浮いている奄美大島ほどの大きさの島です。
なぜこの国を訪れたかといいますと、ここにはイスラム初期から現代にわたり世界第一級のコーランコレクションを誇る博物館「ベイト・アル・クルアーン」、日本語にすると「コーランの館」があるからです。


なつめやしと夕日

サウジアラビアを望むバーレーン湾


コーランの館

バーレーンの首都マナマ中心部にコーランの館は位置しています。8月に訪問したのですが、なんと8月はメンテナンスのために全館休館!事前に連絡しておいたおかげで、特別な計らいをしていただき、コレクションを見せていただけることになりました。




しかも、館長さんと羊皮紙文書修復専門家3名の計4名で一点一点丁寧に説明してくださりました。この寛大かつ決め細やかな対応に感激です。



羊皮紙文書の部屋

写本展示室に入ると、まず羊皮紙写本の部屋となります。ここには、7世紀から10世紀までにわたるイラク、アラビア半島、北アフリカの写本が展示されています。


羊皮紙写本室)



羊皮紙のコーラン(北アフリカ)


羊皮紙のコーラン(イランまたはイラク)


羊皮紙のコーラン(北アフリカ)


羊皮紙のコーラン(アラビア半島)

以下修復家のムハンマドさんに質問しながら観察したことを手短にまとめます。

<製造法>
使用する溶液は石灰水。毛側はヨーロッパの写本用羊皮紙に比べて削りが少なく、肉側との色の違いが目立つ(毛側は黄色っぽい)。不透明性を高めるための白い塗料や、卵などのコーティングはしていない。肉側は組織がもろく、インクが剥げ落ちているため、展示物は毛側を上にしてある。仕上げには布で擦って表面性を高めている。使用しているインクは没食子インク。

<厚さ>
時代、地域によって大きく差がある。見たところイラン・イラクの写本は厚手(約0.3 mmくらい)で、イエメン、サウジ、チュニジアなどの写本は薄手(約0.15〜0.2 mmくらい)でした。

<保存>
展示ケースの底面にはシリカが敷き詰められており、湿度55〜60%に保っている。
ちなみにバーレーンは湿気が高く、砂漠でも車から出ると眼鏡が湿気で真っ白に曇るくらいです。

<修復>
展示物の発見当時はほとんどがボールのような状態で皺くちゃ。それに水とアルコールの混合液の霧をすこしずつしみこませ、ゆっくりと伸ばしていく。最後にはガラスの板にはさんで平らにする。穴や抜け落ち部分は、現代の羊皮紙を穴の形に切り取り、エッジを斜めにスライスしてオリジナルにぴったりと合わせる。重ね合わせることはしない。接着にはPVAグルーを使用。昔は修復用の羊皮紙もオリジナルにあわせた色に染色していたが、今はそのままの色にしているとのこと。

見事な修復ですねとのコメントに対し、修復家のムハンマドさんは、「何事も経験だよ、経験」と、約19年の修復活動をまとめていました。ここでの修復は機械を使わずすべて手作業で根気よく行うとのこと。感嘆します。



中東の羊皮紙製造場所について

コーランの館のすぐそばに、バーレーン国立博物館があります。写本の展示室が設けられており、そこに「アラビア語写本の羊皮紙の使用について」という説明がありました。



羊皮紙説明コーナー


羊皮紙使用の説明

説明によると、アラビア地域では7世紀ごろから主にイエメンのサナア、サダ、サウジアラビアのナジュラン、タイフというアラビア半島の南西地域が羊皮紙製造の拠点で、後にイラクのクーファで高品質のものが作られるようになり、10世紀まで続いたと書かれていました。アラビア半島南部での製造は、アフリカのエチオピアから伝わったのではないかと個人的には思いますが、引き続き調査が必要です。

コーランの館の修復家ムハンマドさんによると、羊皮紙は写本が製造された場所で作られたのではないかとのことでした。つまり、イラクのクーファ、イラン、サウジアラビアのメディナ、イエメンのサナア、チュニジアのケルアン、モロッコなど広範囲にわたります。
ちなみに現在はアラビア地域で羊皮紙を製造しているところはないそうです。また、コーランの修復に使用する羊皮紙はパキスタンから取り寄せていることがわかりました。羊皮紙探訪はまだまだ続きます。

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