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Parchment Journey vol. 6
羊皮紙紀行 Vol.6 〜 ビザンツの輝き
(トルコ イスタンブール)〜

羊皮紙紀行Vol.6は、ビザンツ文化の中心地、かつてコンスタンチノープルとして知られたトルコの首都イスタンブールです。ビザンチンの羊皮紙写本が書かれた土地で、数年前に羊皮紙を復興させたおしゃれな羊皮紙ショップ「カレ・デリ」を訪ねます。


カーリエ博物館(旧コーラ修道院)のビザンチンモザイク

ビザンツ写本を求めて 〜スレイマニエ図書館〜

ビザンチン帝国の首都コンスタンチノープルでは、数々の写本が作成されました。その多くは修道院で作成されたのです。しかし、作成された写本はオスマントルコのコンスタンチノープル征服後、破損や破棄の憂き目にあったり、各地に散逸してしまいました。ビザンチンの写本を見たいと思ってかつての中心地であったイスタンブールに来ても、今やそれを目にすることはほぼ不可能なのです。

しかし、せっかくイスタンブールに来たので、「もしかしたらどこかで見れるかも」、「見れなくても情報だけでも」と思い、イスタンブール旧市街にあるスレイマニエ図書館を訪れました。

突然の訪問に快く対応してくれたのは、若い図書館員のバルキス君でした。「古い写本を探している」というお願いに、すぐ渡してくれたのがオスマン朝時代のコーラン。すべて手書きの写本で貴重なものでしたが、探している羊皮紙写本ではありません。さらにお願いすると、閲覧室での検索を勧められ、それでも見つからないのを見るとアポイントもなにもないのにスレイマニエ図書館の館長に会わせてくれたのです。



スレイマニエ図書館閲覧室


オスマン朝のコーラン

バルキス君は、館長とおそらく副館長、そしてイスタンブール工科大学の教授という3人のミーティングの只中にいきなり連れていってくれました。そして、「館長、お願いがあるそうです」と言い残し、バルキス君は消えていきました。

モスクの付属図書館であるこの図書館にはもちろんビザンチン写本などあるはずもなく、ダメもとで聞いてみた羊皮紙のコーランの所蔵もありませんでした。ここまで来て何の情報も得られなかったと思い半ば落胆していたところ、教授のほうから、「コーランの羊皮紙の研究の役に立ててください」とサウジアラビアのイスラム研究の権威といわれるかたの連絡先をいただき、
さらに中東らしくバラ水の香水までいただいてしまいました。

ビザンチン写本の情報は得られなかったのですが、アポイントもなしで面白い体験ができ満足でした。ビザンチン写本を見るなら、イギリスの大英図書館やアイルランドのチェスタービーティー図書館がよいでしょう。



ビザンツの羊皮紙

写本は見つからなくても、写本が書かれた場所は見ることができます。イスタンブールにはキリスト教の聖堂や修道院が残っています。その中で、そのモザイクの壮麗さで今では観光の名所となっているコーラ修道院(現カーリエ博物館)を訪れました。

コーラ修道院はモザイクで有名ですが、ビザンチン時代には神学校なども併設されており、写本の作成も行われていたのです。そこの校長であった神学者プラヌデスという人が写本を制作する羊皮紙を発注するために、1295年ごろ次のような依頼の手紙を書いています。

「羊皮紙は薄くなくてはならない。分厚いものが混じっていると、ぶくぶくに太った本になってしまうから。洗練された冊子にするには、薄い羊皮紙でなくてはなら
ない。」
(出典:Jeffrey Abt & Margaret A. Fusco著「A Byzantine Scholar's letter on the Preparation of Manuscript Vellum」。筆写訳。)



コーラ修道院(現カーリエ博物館)


このような場所で写本が書かれていたのだろうか
(コーラ修道院内部)

プラヌデスは、わざわざ「羊皮紙を薄く!」と指定しています。これは、多くの場合にかなり分厚い羊皮紙が供給されていたことために書き記した言葉でしょう。実際にビザンチンの写本を見たり触ったりしてみると、当時使われた羊皮紙には3つの特徴があることがわかります:

1. 分厚い
2. うねっている
3. テカっている

特にページ全体に細密画が書かれているページには分厚い羊皮紙を利用していました。羊皮紙が分厚いと、毛側と肉側の繊維の収縮率にかなりの違いが生じて、「うねり」がでてしまいます。

また、羊皮紙をテカテカに磨いていました。これはおそらくテカテカに磨くことによって塗ったり貼ったりした金がきれいに光るからだと思われます。なめらかな石などで磨いたのですが、卵白でコーティングして光らせたりもしました。



筆者作成のビザンチン写本作品


羊皮紙にツヤを出すために石で研磨

その結果、金もとてもよく光り、細密画も非常に細い線まできれいにかけるというメリットがあるのですが、表面が滑らかなゆえに時がたつにつれて絵具が剥がれ落ち、現在は悲惨な状態になっている写本も少なくないのです。



おしゃれな羊皮紙ショップ 〜カレ・デリ〜

ペルガモンから始まりビザンツの写本まで1000年以上続いたトルコにおける羊皮紙の歴史ですが、世界の他の場所と同じく紙にその座を奪われていきます。2004年に、羊皮紙を復活させようということで、羊皮紙を製造・販売する「カレ・デリ」が設立されました。(デリとはトルコ語で「皮」を意味します。)



肉削ぎナイフを持つオーナーのアハメット・クルト氏

山羊皮の羊皮紙を製造するのと同時に、数多くの「羊皮紙グッズ」を製造販売しています。(レザー製品も扱っています)
イスタンブールでもっともおしゃれな場所のひとつである、新市街のベイオール地区に位置し、羊皮紙カバーの手帳やしおりをはじめ、ランプシェードやネックレス、筆入れや、さらには羊皮紙のバッグまで販売しています。



山羊皮のパーチメント


博物館でも販売している羊皮紙の手帳やしおり



羊皮紙のアート作品やアクセサリー



なんと羊皮紙バッグも!
耐水加工なので雨に濡れても「生皮」にはなりません。

オーナーのご夫妻もとても気さくな方で、訪問した日は何時間もずっとトルコチャイを何杯も飲みながら付き合ってくださいました。
羊皮紙って古い写本だけでなく、こんな形でも活用できる「古くて新しい素材なんだ」と感じるとても面白いお店です。

カレ・デリの商品一覧はウェブサイトからご覧になれます。ウェブサイトを別ウィンドウで開く



場所はイスタンブール新市街、トラムのTophane駅から徒歩5分のところにあります。ちょっと奥まった場所にありますが、イスタンブールを訪れる機会があったらぜひどうぞ。
場所を確認する


羊皮紙発祥の地といわれるトルコにおける羊皮紙の歴史は、ヨーロッパとはまた一味違った流れが感じられます。



ボスフォラス海峡から望むアヤソフィアとスルタンアハメットモスク


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